前にも書きましたが私は集団自衛権は必要だ…と考えています(勿論、ある程度の限定できる条件で)が、それは今日のテーマとは無関係。 安保法制懇メンバーである村瀬信也上智大学名誉教授のwedge7月号への寄稿 「集団的自衛権の行使に憲法改正の必要なし」につぎのような文章があります。 『もとより、国家が、保有する国際法上の権利を、条約上または憲法上の制約で、もしくは政策上、行使しないということはありうる。たとえば、いずれの国も国際法上、同盟を結ぶ権利を保有しているが、スイスのように条約上それが禁止されている場合や、オーストリアのように憲法上禁止されている場合には、同盟の権利を行使することはできず、中立を維持しなければならない。しかし、スウェーデンや他の多くの非同盟諸国は、中立主義を維持する国際法上の義務はなく、単に政策的にこれを採用しているのである。日本の場合、集団的自衛権について、これを制約する条約上の義務はなく、憲法上も、これを禁止する規定はない。』 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3954?page=2 「憲法上も、これを禁止する規定はない。」ということについて、条文と対応しつつ説明することはなされていない。彼の意見に私は賛成できないので、ここに反論したい。 (もっとも著者がこの日記を覗く可能性は実質的にゼロだろうが、彼のメールアドレスが見つからなかった。) ……………… 憲法第9条 1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。 ……………… 確かに自衛権なる語は存在しない。確かに自衛権は直接的には否定されていない。しかし、自衛隊による自衛権行使は否定されている…としか私には読めない。 自衛を軍隊によって実施することを合憲とした最高裁判例はあるが、これは安全保障条約に基づく米国軍による日本防衛にかんする判断であった。《事件番号;昭和34(あ)710 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反》。したがって自衛隊については判断されていない。 ある例。日本の領土のある島を、自国領土だ…とする他国が話し合いで解決できないのに我慢ならずに軍隊で攻撃・上陸してきた時、どうするか。放置して国連に訴えるだけなら違憲にはなることはない。同盟国である米国が防衛してくれるなら、これも上記最高裁判決により違憲にはならない。 問題は自衛隊を出動させて防衛にあたる場合である。 自衛隊は空対艦ミサイルを搭載できる攻撃戦闘機や、ヘリ(9機も同時に管理可能)やミサイルを搭載する各種護衛艦・潜水艦を有するが、これを使用することは領土に関する国際紛争の解決に、自国領土を護るという国権の行使に武力を使うことになる。そもそも自衛隊の存在そのものが第2項に反する。 違憲でないことの主張の為には、上記例が、国際紛争ではないこと、自衛隊が武力を持っていないこと、上記防衛が武力の行使ではないこと…を説明する必要がある。 防衛を国際法が認めているかどうかは、村瀬信也名誉教授も認めているようにここでは関係ない話だ。 法律、特に憲法の解釈は自由だが、国としての決定権は司法が持つ。政府の解釈でどんどん進めて、あとで違憲判決を受けるよりは早めに誰かが訴訟を起こして最高裁の判断を仰ぐか、文字通りの解釈で問題のない憲法に変えてしまう方が無難だと私は思うのですが…。 集団自衛権では同盟国の戦争に巻き込まれることを心配す向きも多いようだから、彼らが安心できる法整備も必要でしょうね。 . |