伊村達児さんのジャガイモづくりの物語、第二話です。 「ゆいトレ」マガジン2017年2月号 (インカのめざめは3月号ら掲載予定) http://mag.yui-tr.jp/index.html ●幻のいも「インカのめざめ」 ジヤガイモの原産地・アンデスで、晴れのお祭りにしか食べられなかった高級ジャガイモ「ソラナムフレファ」種を日本向けに改良したのが「インカのめざめ」。 栗かさつまいものような風味と、じゃがいもとは思えない鮮やかな黄色、ジャガイモの糖度は一般的に5度程度なのに対して、インカのめざめは6~8度と糖度が高く、甘みと濃厚な味わいが特徴。 しかし、インカのめざめはとても栽培の難しい品種で、しかも疫病や害虫に弱く、小ぶりなので機械を使えず、収穫が手作業になるため、ほんの少ししか生産されておらず、ほとんど出回っていない。 多くの農家が儲からないと敬遠するこんな希少種を、無農薬でつくることに挑戦するところが、まさに伊村農園の真骨頂だ。 ●親孝行な特待生 伊村は、畜産業を営む直一・久美子夫婦の男ばかり4人兄弟の次男として、沖永良部島和泊町で生まれ育った。兄弟は分担して牛の世話をするなど、よく両親の仕事を手伝っていたという。 多くの若者がそうであるように、伊村は島を離れて、宮崎県の高校に進学する。学費も寮費もかからない特待生だった。 「勉強ばかりの毎日で、高校生らしい恋愛をする余裕もありませんでした」 神戸大学を志望して浪人中だったとき、受験のために買った参考書を読んで感動。著者・都留重人のプロフィールにあった一橋大学に志望校を変更した。 無事に社会学部に入学してから、都留先生が十何年も前に退官していたことを知ったというドジな一面もある。 「とても充実した4年間で、大学時代の経験があったから、社会に出ても組織のルールやマナーを踏み外すことなくこれた」 ●電通で知った人間関係の大切さ 一橋大学を1993年に卒業した伊村は、いま話題の電通に就職し、関西支社の営業部門で活躍する。関西電力やテレビ局、そして当時のトップクライアントだったパナソニックへと、まさに広告マンとして順風満帆な仕事ぶりだった。 「テレビがデジタル化された時期で、たくさん面白い仕事がありました」 退職までの2年間は、テレビ局で40人ほどのメンバーをまとめあげた。電通関西にある「皆で協力し合おう」という風土から、伊村は人間関係の大切さを学び、仕事で関わった多くの人たちが、伊村農園のファンとなり、毎年ジャガイモを購入し続けてくれている。 つづく |