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2009年08月02日(日) 
たまには仕事に絡むお話を!

猫や鼠の口ひげ(whisker)はクリントン大統領が2000年に「ナノテクノロジー国家戦略」をスタートさせた源です。

昔からガスを使用する炉の壁などに直径0.01~200ミクロンの繊維状のものの存在が知られていました。その繊維にグラファイト・ウイスカーとの名前をつけたのは1962年のベーコンと言う人が最初だったと私は認識しています。

私達がその研究を始めた20数年前には気相成長炭素繊維と呼ばれていました。これを加熱して黒鉛化(結晶化)したものをウイスカーと呼んでいました。

1991年NECの研究グループの方々が特に細い繊維の構造解析を行い、炭素が六角形の網目が並んだシート(今はグラフェンシートと呼ばれています)を筒状に捲いた構造をしていることを見いだし、カーボンナノチューブと名付けました。

巻き上げる向きによって何種類ものものが存在しますが、性質は大きくは金属性のものと半導体に分けられます。これが年輪状に重なった多層カーボンナノチューブもあります。

下図はCGで描いた単層のカーボンナノチューブです。細いものの直径は0.5ナノメートル位です。

 

ナノとは10の9乗分の一のことです。ミクロンの1000分の一の大きさです。

気相成長炭素繊維と呼ばれていたころの直径は500ナノメートル(0.5ミクロン)
以上でした。気相成長炭素繊維は非常に多層です。

少し前に米国のスモーリー博士が炭素原子60個からなる、サッカーボールの模様のような構造のフラーレンを発見した事と相俟って、ナノテクノロジーが急にもてはやされるようになりました。

上記クリントン大統領は日本に遅れた米国のナノテクノロジーを挽回させようとスタートさせたものです。かっての主体であった炭素からそれ以外のナノテクも広がっています。ナノサイズのものの技術開発や研究が爆発的に広がっています。何でもナノテクと関連付けることが流行っています。

私共の会社(と言っても今の私は正式な社員ではありませんが)では単層および多層の二種類のカーボンナノチューブを製造しています。

カーボンナノチューブはゴム・樹脂や金属の補強・導電性付与、リチウムイオン電池の電極などに使用されており、人工筋肉、燃料電池、キャパシタ、トランジスタ、集積回路などへの利用の研究も進んでいます。

閲覧数1,684 カテゴリ日記 コメント3 投稿日時2009/08/02 00:27
公開範囲外部公開
コメント(3)
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  • 2009/08/02 15:07
    こんにちは、コッチさん。

    物凄い微細な世界があるのですね。私の仕事とはかけ離れてて異次元のようで想像がつかないですが、その異次元の奥に広がる世界というのも興味深いですね。
    ド素人の質問ですが、身近なものでもカーボン繊維の製品がよくありますが、そのカーボンナノチューブで作られてるのでしょうか?

    昔、お世話になった鉄工所の親方が「あんたとこは 100分の1ミリの世界ですやろけど、ウチとこは、そんなもん・・・1000分の1ミリの世界でっせ!」

    へ~っ?
    「ノギスではアキマヘン、役に立たん。巻尺やないとなあ」
    1000分の1メートルの世界でした。

    次項有
  • 2009/08/02 18:47
    鉛筆コッチさん
    エゴコロさん

    こんばんは!

    普通はカーボン繊維(炭素繊維、黒鉛繊維)と気相成長炭素繊維・カーボンナノチューブとは別物です。後者は長さも通常は1ミリ以下、多くはミクロンオーダーで、外観は単なる「すす」です。カーボン繊維は黒いだけで普通の繊維です。

    炭素繊維は特殊なアクリル繊維の長繊維を焼いて作るものと、タール・ピッチを紡糸して焼いたものと2種類あります。

    ともに織物にしたりそのまま並べて樹脂や金属の補強に使用します。

    ピッチ系の炭素繊維はやったことがないのですが、アクリル系炭素繊維は何年か取り組んで、米国と韓国に技術を売りました。

    もう記憶が少し怪しくなっていますが、特殊なアクリル繊維を7000個の孔のあるノズルから紡糸し、焼いて作っていました。1本のフィラメントの直径は、私の時は5ミクロンと記憶します。細い方が強いのですが、取り扱いがむつかしい。

    直径で管理されたり、直径が問題になることはないと思います。強度かモデュラス(ヤング率)がすべてです。リニアーモーターカーなどでは熱伝導率が重要と」聞いたことがあるように思います、超伝導のための冷却に関係して。

    さらに炭素繊維を2000度以上で結晶化させると黒鉛繊維となります。モデュラスが高くなる(補強された材料が曲がりにくくなる)のですが、脆くなる(伸びにくい)欠点があります。

    身近にはゴルフクラブとか釣り竿によく使われていました。釣り竿は電気が通るので、糸を電線に引っかけるとアブナイと言われていました。

    用途は車、航空機、船舶などです。船舶ではガラス繊維と競合していましたが、どちらが勝ったのかは不勉強です。

    カーボンナノチューブは価格が桁違いに高いです。私が関与していたころは1kgが10万円を切れるかどうかが問題でした。今は1万円くらいにはなったでしょうか。身近なもので入っているものの有無についてはよく知りません。リチウムイオン電池には多分入っていると思います。液晶モニターのバックライトにも有用ですが、もう使用されているかも知れません。

    長すぎる講釈になりましたが。
    次項有
  • 2009/08/02 23:49
    とても丁寧に解説していただきありがとうございます。
    私たちがカーボンとして知ってる釣り竿などの製品に使われてるものとは全くレベルが違うのですね。
    勉強になりました。
    次項有
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