たまには仕事の話しも… ある程度大きい企業には、中にいないと覗うことができない、様々な職種が有ります。特許部門(その後、工業所有権、さらには知的財産権…と広がっていきますが)もその一つです。 長年、特許も私の専門の一つになっています。前の会社でもそうでしたし、今(と言ってももう従業員ではありませんが)でもそうです。 特許権とは自分(自社)の行った発明に関して得られる独占権です。特許権を得るためには自分の発明を世に公開する必要があります。その代償として、一定期間の独占権が得られるわけです。他人は特許権者に無断でその発明を実施することはできません。 ○特許権を得るにはそれなりのテクニックが必要です。自分もしくは自社の発明をどのように認識し、どのような広さの権利を得るか。先行するどのような技術が存在するか。 ○他人によって侵害された権利をどのようにして守るか。 ○技術開発に当たって、他人の権利を侵害しないように、事前にどのような調査をするか。 ○自分にとって障害となる権利をどのようにしてつぶし、または狭い権利として無害化するか。 ○最先端の技術情報としての公開された特許出願をどのように調査し、どのように利用するか。 これらの職責を果たすためにはその方面の技術への理解・認識が必要ですし、法律の解釈、過去の判例の熟知、裁判テクニックなどが要求されます。 権利といっても、土地の所有権のように境界線を明らかにした地図がある訳ではありません。権利範囲は全て文章で表現されています。したがってそこで使用されている言葉の解釈が重要になってきます。争っている両当事者は自分の都合のいい方に解釈しようとします。その争いの中で、自分の主張を説得性ある論理を構成して行わないと相手に勝てません。 私はこれまで、六つの裁判を直接担当し、五勝一敗です。その一敗は相手の特許権を無効とするこちらが仕掛けた争いでしたが、裁判所は該当特許の権利範囲を狭いものと解釈して有効としました。その狭い解釈であれば、その権利は我が方にとっては無害になります。したがって私はこれまで全勝したと人には吹聴しています。 当初は技術者としてはみ出された世界と思っていて一時的に落第生気分になったこともありましたが、今は結構嵌っています。技術者が更に広い知識と能力を付けて初めて可能となる職種と思っています。 米国の陪審員制度も色々調べたことがあるので、日本の裁判員制度にもおおいに関心ありです。 |