低線量の放射線照射は身体にいいかどうか、後に述べるように私は重要なこととは思っていません。
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ホルミシス効果(ホルミシスこうか、英: hormesis)とは、生物に対して通常有害な作用を示すものが、微量であれば逆に良い作用を示す生理的刺激作用のこと。ホルミシス(hormesis)とは、ギリシャ語のホルメ(horme)に由来する。このホルメはホルモンの語源でもある。意味は、「刺激する」である(英語では、to excite)。特に自然放射線の人体への健康効果を指す場合は、放射線ホルミシス効果(Radiation hormesis)、また放射線ホルミシス学説ともいう。 ………………………
この本の71頁以下で小出裕章氏は放射線によるホルミシス効果を熱心に否定しています。色んな意見があるので、否定することには問題ないのですが、否定のやり方を見て、これでも彼は事実に忠実な研究者と云えるのか…とビックリしました。
この本は研究者としての著作ではない…と云われればそれまでですが。
彼は自分の理論の紹介や研究論文を引用したのではなく、Karl Z.Morgan氏の言葉だけで否定しています。何故Karl Z.Morgan氏の考えに賛成するのかについて説明はありません。
Karl Z.Morgan氏は原爆を開発するマンハッタン計画のメンバーであり、原爆以後は多くの核兵器の開発に携わったが、工場内放射性物質による従業員の内部被爆問題に遭遇し、反核兵器論者・反原発論者に変貌して行ったようです。
1995年、the Health Physics Societyの初代会長に就き、 労働者健康被害裁判において被害者の弁護に忙しかったようです。
Karl Z.Morgan氏がどのようなデータに基づいてホルミシス効果を否定したのか、原文をウエッブ上で探しましたが、彼の論文は全く見付からない。1999年に92歳で亡くなっているので、ウエッブにアップされていないのか、彼は保健物理学会の大御所ではあるが、研究者ではなかったのかも知れません。
核兵器製造工場で働いて身体を痛めた人たちに対する自分の責任を痛感して、それらの人々を救うための政治的発言であった可能性が大きいと私は思います。
Karl Z.Morgan氏は線量被曝による被害はLNT説よりも高い…との意見であり、米国科学アカデミーのBEIR VIIはLNT説であり、フランスの医学アカデミーと科学アカデミーの共同報告はLNT説よりも少ないというものです。
私は Karl Z.Morgan氏の活動に敬意は表したいと思いますが、彼の説を信じる根拠は未だ見あたりません。
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LNT([Linear Non-Threshold)説
100ミリシーベルト以上が有害である(明瞭なデータがあるの200ミリシーベルト以上)あることはほぼ一致を見ているが、100ミリシーベルト以下の危険性については意見が分かれて居る。LNTとは200ミリシーベルト以上での被曝量と危険性の関係式を100ミリシーベルト以下にまで外挿しようとする説。これ以下は安全という閾値などはない…とする。科学的な根拠が充分にあるわけではないが、対策はこれを基準に考えれば安全側である…との考えから広く採用されているようである。 ………………………………
単なる解説ですが、閾値が存在するとの考え方が今年四月のNew American
(Thursday, 28 April 2011 )に紹介されています。
http://www.thenewamerican.com/tech-mainmenu-30/envi…-radiation
小出氏はフランスの医学アカデミーと科学アカデミーの共同報告を全く無視し、その理由も述べていません。Karl Z.Morgan氏の高被害説は知りませんが、LNT説を主張する報告、およびそれより被害は低いとする報告は共に沢山出て来ています。
反原発派と原発推進派の対談で、低線量被曝被害についてはLNT説が正しいか、低被害説が正しいのかまだはっきりしていない…とされており、それが本当の所だろうと私は思っています。Karl Z.Morgan氏の意見を主張する小出氏は極少数派であり、その理由も説明せず、研究結果に忠実ではありません、支持するデータがゼロだとは云いませんが…、かれはそれを引用もしていません。
私自身はホルミシス効果の有無は重要ではないと考えています。面白いのでお茶っ人の日記にもそれについてアップしましたが…。
http://www.sns.ochatt.jp/modules/d/diary_view.phtml…=&l=30
http://www.sns.ochatt.jp/modules/d/diary_view.phtml…=&l=30
何故一般に認められる結論が出ていないか…というと、効果が小さ過ぎて他の要因の影響に隠れてしまうからです。そこの議論はいわゆる重箱の隅をほじくる行動だと思います。
低線量の被曝は、ホルミシス効果の有無に関係なく気にする必要ないことはどの説を見ても云えます。煙草を控えるとか飲酒をチョット控えることで十分カバー可能です。胃ガンだけでいえばヘリコバクターピロリ菌を除去しておけば十分です。私が除去した時は健康保険では認められていなかったので、医者がウソの申請でやってくれましたが、今は保健が使えます。
反原発熊取六人衆の1人の今中哲二氏は「これは私の個人的な見解なんですけれども、100ミリシーベルト以下の被曝の効果を直接観察することは多分かなり難しいと思っています。というのは癌になるとしたらいろんな原因があります。あくまでそういった自然で変動している上に、放射線被曝の影響が上乗せされる。低線量のところは結局、どういうふうにモデルで考えていくかということになります。私がデータ見る限り直線で真っ直ぐ考えるのが一番合理的でタフな考え方だろうと思っています。」と云っています。
http://space.geocities.jp/iitate0311/0604.html
ラジウム温泉が身体にいいかどうか…など重要ではなく、汚染事故を防ぐことが大事だと思います。小出氏はホルミシス効果の否定にやけに熱心です。
悪く考えれば小出氏 は他の発言から見ても放射線被害への恐怖心を煽ることを目的しているように思います。その為に役立つ資料を集めたようです。その解釈も危険な方に持っていくわけです。危険である可能性を秘している政府、御用学者、電力会社に対抗するためには意義がある…と云えるかも知れませんが、それは研究者としてではなく政治家としての行動です。
福島から遠くに住んでいる人は小出氏の著作を読んで、放射能の恐ろしさを認識し、電力会社や政府の安全化対策を厳しく見守るか、再生可能エネルギーが実用に耐えるように技術開発に努力して貰えれば結構ですが、福島原発の近くに住む人たちは「直線的無しきい値仮説」でノーベル生理学・医学賞を獲得したH・J・マラー博士に対して真っ向から反対説を唱えたラッキー博士の日本への贈り物「放射能を怖がるな」を読んで心配をなくし、元気になってほしいです。
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/481740728X/japanontheg01-22/
私はホルミシス効果は説得性があるな…とかねてから思っているので、今更読む気はありませんが。