このような記事を読む度に切ない思いがします。研究内容に問題あるのか、記者の理解力に問題があるのか。
少数の施設で実施された実験計画には問題ある場合も多いのですが、大々的なものではミスは少ないでしょうし、講演会で発表する場合に比べて学会誌に記載される時は論文内容の審査がなされるので、問題ある可能性は低いので、報道力の問題か。 詳しく読もうとする読者をいらいらさせる記事だと思います。
記事【 乳がんリンパ全切除の有効性疑問 一部切除と生存率変わらず】 2011.02.12 日経記事
〔ワシントン共同〕早期の乳がん患者の外科手術で、転移を防ぐために脇の下のリンパ節全体を切除する「郭清」をしても、リンパ節の一部しか切除しなかった場合と生存率に変わりはないとする米国の多施設臨床試験の結果が、9日付米医学会誌に発表された。
「郭清」はがんの再発を防ぐために広く行われているが、むくみが出るリンパ浮腫などの合併症が起きやすいとされる。研究グループは「(郭清をやめる)新手法を取り入れることによって、術後の生活を改善できる」と指摘している。
100カ所以上の医療機関が参加。1999~2004年に、手術前に脇の下の「センチネルリンパ節」を検査して転移が見つかった早期がんの患者を対象に、リンパ節全体の郭清をした場合と、転移が見つかった一部だけを取り除いた場合の生存率を比較した。
転移を防ぐための抗がん剤や放射線治療なども続けた結果、5年後の生存率は全切除した445人は91.8%、一部切除の446人は92.5%と、ほぼ同じだった。
一方、合併症は全切除では70%で起きたが、一部切除では25%で、大きな差が出た。
研究グループはリンパ節切除よりも、抗ガン剤や放射線による全身治療が再発を防いでいるのではないかと見ている。
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011021001000315.html
意見 重要なポイントが記載されていない。報告書に記載がないのか、記者にはそこが重要であることに思いつかなかったか。前者なら報告者の、後者なら記者としての能力の問題。
①どちらの治療をどの患者に行うか、無差別に2グループに分けて行ったか、
これは患者に無断で実施することは人道的に問題あるが、患者の要求によって治療を変更するとデーターに偏りを生じ、結論の信頼性を低下させる。
②郭清有無による再発率の相違、死亡者の死亡原因の分析、種々のケースの場合のQOLの比較等の検討がぬかりなくされたのか。
例えば 郭清しなかった場合、再発率は高く、死亡率は高くなったが、郭清しなかったのに再発しなかった人達は合併症に罹らずに寿命が長くなった(郭清しないことで体力が維持された)ので両者を平均すれば郭清しなかった患者の生存率は一部切除の患者と同じになったのではないか。そうなら生存率は変わらなくても郭清は医学的には意義があったことになる。
また重要なのは生存率よりはQOLだと思うのですが、その評価をどのようにし、どのように集計したのか記事に記載されていない。
このような記事を読む度に私は口を尖らせたくなります。私は不満分子かしら。