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2011年03月01日(火) 
   機会均等であれば公平と云えるか。

   人は自分の出生を選択できない。資産家に生まれるか、教育熱心な家庭に生まれるか、スポーツマンとして成功した親の体格の遺伝を引き継いで生まれるか、それらのメリットのない家庭に生まれるか。

   競争の機会は与えられても、上記のような出生に依って競争へのスタート・ポントが大きく異なる。競争の機会は均等に与えられても、勝負の結果は初めからおおよその判断ができる。

   東大の入学試験に通る人はその人の努力の成果だと云えるかもしれないが、努力するという素質でさえも家庭の教育に大きく支配されるのではないか。東大の入学試験の合格者は普通より裕福な家庭が多い…いうのは統計的事実だ。

   有能な資質を備えて生まれた人は社会的に認められ、大きな仕事をし、大きな収入を得るだろう。それらを持たずに生まれた人と大きな差ができるだろう。これは公平な社会と云えるのだろうか。

   二人の建築作業員がいる。Aは筋肉隆々であり、Bは痩せ形で弱々しい。ある作業をAは汗も流さず1時間で終えてしまう。Bは汗水流して働いても1日かかる。Bの努力はAの何倍になるか。しかし、努力したBは努力なしで仕事を終えたAよりも多くの報酬を得るべきだ…という人はいないだろう。努力の程度は報酬の基準にはならない。

   公平な社会とはどうあるべきか。

   ジョン・ロールズは「無知のベール」を被った人たちで作られた、共同体生活を律する原理こそが公平なものだとした。「無知のベール」を被る…とは、自分や一緒に計画する人たちがどうのような立場かを知らない…ということだ。

   自分や一緒に検討している人たちが資産家に生まれたのか貧困家庭に生まれたのか、親から引き継いだ逞しい体躯の持ち主なのか、貧弱な身体しか持っていないのか、どのような宗教、民族、道徳観等々のグループに属しているのかを知らない。それが無知のベールに被われた状態。

   そのような人たちが規律を作っていく時、自分が有能な素質に恵まれていればそれを生かせるような、自分が恵まれた素質を持っていなくても幸せな生活を送れるような…社会を作ろうとするだろう。

   やっと動けるだけの身体しか持っていなかったり、記憶力の衰えた高齢者であっても十分に幸せな生活を送ることができ、一方、偶然に能力に恵まれた資質を持っていればそれにより大きな仕事をし、大きな収入を得られるような規律を作るだろう。

   その規律は悪平等なものではなく、有能な人がその能力を生かすことにより、その人が幸せになるとともに、社会も裕福になり、有能ではない人もその恩恵を被ることができるようなものになるだろう。

   自由至上主義では、どの人間も自由への基本的権利―他人が同じ事をする権利を尊重するかぎり、みずからが所有するものを使ってみずからが望むいかなることも行うことが許される―という。自分は自分だけのものなのだ。

   ジョン・ロールズは、それは公平とは云えず、正義に反する…と考える。自由至上主義では、能力のない人は置き去りにされる。

   自分の選択や努力に依らない、偶然の運によって得た素質を利用して、人より大きな利益や幸せを得るなど、自分の幸福のみを追求する自由市場社会は公平とはいえないのだ。

…………………
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4人の遭難漂流者 Justice @Michael J Sandel ②http://www.sns.ochatt.jp/modules/d/diary_view.phtml…=&l=30

肺ガンで儲ける Justice @Michael J Sandel ③http://www.sns.ochatt.jp/modules/d/diary_view.phtml…=&l=30

ミミズ食べ賃Justice @Michael J Sandel ④http://www.sns.ochatt.jp/modules/d/diary_view.phtml…=&l=30

ビル・ゲイツのお金を分ける Justice @Michael J Sandel ⑤
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自殺幇助  Justice @Michael J Sandel ⑥
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徴兵と代理出産Justice @Michael J Sandel ⑦
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イマニエル・カントの思想 Justice @Michael J Sandel ⑧
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カントの思想(続) Justice @Michael J Sandel ⑨
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閲覧数497 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2011/03/01 01:06
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