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2011年05月16日(月) 
   前回(下欄最下行 シリーズ⑭)に挙げた自国の過去の不正を残念がるのは誰でも同じだ。問題は過去の不正に関わっていない現代の人々が祖先の不正に対して道徳的責任があるのかどうかだ。

   リバタリアン(他者の権利を侵害しない限り、各個人の自由を最大限尊重すべきだと考える人たち)は前回に挙げた国家の過去の行為に対する公式謝罪については道徳的個人主義の立場から反対する。

   契約などにより自分で選んだ行為に対する個別的義務以外にも、人が他人に自然に持っている普遍的義務(合意はいらない)の存在はリバタリアンも認めている。しかし人は他人の自分と同等な権利を認める…という制限以外には自由である。

   自分が自由に選択したことに対する責任、自らの意思で背負った責務(約束、公平な契約、)、契約なしに原理的に負っている義務(相手から利益を受けた場合はそれに報いること、弱者への援助、また周囲の社会や政府の恩恵を受けていることにより、社会や政府に対し皆が普遍的に暗黙内に認めている義務、例えばハイウエー走るだけで暗黙の内に法に同意し、それに拘束されること)以外において、責任はない。

   それに対して、自分が関わりを持つことになかった親や祖先の不正な行為には、何の責任もあり得ない。その罪は前の世代の人のものであって、私のものではないからだ。自分がどの親から生まれるかは自分では選択することは出来ないから、そのことで自分には責任問題は生じ得ない。


   サンデル教授は、自分が参加もしておらず合意もしてない、または自分が生まれる前に自分の属するコミニュティが行った行為には責任がない…という考えは少しおかしいように思う…という。

   (そのような責任があるとすれば、紀元前にユダヤ人を追害したロ-マ帝国やのシリア、バビロニア、その他各国の十字軍の子孫はイスラエル国民に謝罪する責任があるのか、歴史をどこまで遡るのか…についてはサンデル教授は言及していない。)

   おかしい理由として次ぎの2項を挙げている。

   ○家族や同胞が互いに感じる特別な責任や連帯感、自国や同胞に感じる誇りと恥、愛国心(現在の政権への賛否とは無関係に存在する)…、これらは各自が持って生まれた性向であり、このような要求なしには人生への理解が困難だ。

   ○リバタリアンの考え方からすれば、政治とは宗教や善き生活の思想から離れ、それらによる対立に対して中立でなければならない…と主張する。しかし現在、正義と権利をめぐって白熱した議論が行われている問題の多くは、賛否両論のある道徳的・宗教的問題を取り上げずには論じることができない…との考えからサンデル教授は道徳的個人主義に疑問を呈する。そのような対立から離れて、自分を中立の立場に置くことは可能なのか…と。




   さて、このシリーズもそろそろ終わりに近づきました。

   サンデル教授がコミニタリアンであり、終わりにはコミニタリアニズム〔共同体主義。20世紀後半のアメリカを中心に発展してきた共同体(コミュニティ)の価値を重んじる政治思想〕を強く解説する筈であるが、私にはその方向がどこで説明してあるのかが未だに読み取れていない。

   後2~3回で終える積もりですが、最後が旨く結べるかどうか。


    …………………………

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自殺幇助  Justice @Michael J Sandel ⑥
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格差の是正  Justice @Michael J Sandel ⑪
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ゴルフの本質 Justice @Michael J Sandel ⑫
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目的・美徳・名誉による正義の評価 Justice @Michael J Sandel ⑬
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先祖の罪を贖うJustice @Michael J Sandel ⑭
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閲覧数725 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2011/05/16 00:33
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