尖閣諸島5島の内、まだ国有化されていない魚釣島、南小島、北小島について東京都知事が購入を宣言し、国が後追いで国有化を決定した。これにより中国人が誇りを傷つけられた…と反発するとは私も予想だにしなかった。
もともと個人のもちもの(日本政府から購入、転売されている)だったが、東京都が購入を計画して資金を集め、日本政府が後追いで購入を決めた。3つの状況で日本政府購入が中国人の神経に響くとは…。どこが持とうが売買行為自体が問題?
よく判らないが、東京都に譲ってはどうだろう。
【相手の考え方を知る】 異国民同士が相手の心情を理解するのは難しいものだ…という気がします。
絶えず相互コミニュケーションの努力が必要です。
今回の事件で、どこが中国人一般の怒りの琴線に触れたのかなかなか難しいです。中国人の誇りを傷つけられた…とコメントする、たいして反日ではない日本製品を愛好する学生へのインタビューを見ました。上記3つのケースでどれが傷つくものであったのか、私にも判りません。
中国人の心の動きを知るためには、中国の国家的規模の反日教育の実態を知る必要があります。中国政府は民衆の不満のはけ口を国外に向けるために学校で反日教育をやってきました。一例は石平著「私は何故中国を捨てたのか」を参照。実態通り表現されているかどうかは確認できていませんが…。
韓国の場合とは違って日本は中国を侵略して多大の損害を与えました。しかしそれを乗り越えて1980年代の日中親密時代がありました。デモに参加したのは1980年代の親日友好ムードを知らない若者、即ち上記反日教育をベースにものを考える人たちです。日本…と云えばすぐにいきり立つ人たちです(中国政府もそれを利用した気配もありますが…)。日本政府はそれらの人の心の動きをどの程度把握していたのか。
【事実関係を調べる】 日本政府は領土問題は存在しない…など、韓国並みのレベルの低い発言をくり返すことをやめて、国際司法裁判所に判断を仰げばどうだろう。勝てる自信がない?
尖閣諸島の所属についての歴史の詳細はつぎの二つに詳しいです。
① 日本寄り 外交防衛課 濱川今日子 「尖閣諸島の領有をめぐる論点」
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0565.pdf
(ここには所属の争いの棚上げの約束については出て来ません。)
②やや中国寄り 孫崎亮 著 「日本の国境問題」 (ちくま新書)
所々を拾い読みしました。
尖閣諸島が琉球領であった…との証拠は見付かっていないようです。
したがって、1879年に日本政府が琉球を鹿児島県に編入した時に、自動的に尖閣諸島も鹿児島県内、すなわち日本領土内の土地になったかどうかは疑わしい。
1885年、尖閣諸島を日本の領土とする(国標建立)案が出されたが、清国の領土を日本が占拠しようとしている…などと清国で騒がれたので、国標建設の件太政官会議に上申されなかった。
1894年、日清戦争が始まり、勝敗がほぼ明確になった1895年、尖閣諸島を日本領土とする閣議決定をした。
これが武力による占領とみなされなければいいが、そうでなければ国際法に基づき領有…とは言えない可能性もあるように思えます。
1972年の日中国交正常化の過程で周恩来と田中角栄の間では尖閣諸島問題は棚上げされた。
1978年の日中平和条約の時にも、鄧小平と園田外相との間で棚上げされた。
2000年の日中漁業協定においても「暫定措置水域」とされた。
(暫定措置水域内では、いずれの国の漁船も相手国の許可を得ることなく操業することができ、各国は自国の漁船についてのみ取締権限を有する。
同水域における操業条件は日中共同漁業委員会が決定する。同水域において相手国漁船の違反を発見した場合は、その漁船・漁民の注意を喚起すると共に、相手国に対して通報することができる。2000年2月、日中両国の閣僚協議によって、同水域を「中間水域」と定め、妥協された。)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E4%B8%AD%E6%…4%E5%AE%9A
2010年9月7日、尖閣諸島で日本が領海と主張する海域で 操業していた中国漁船と日本巡視船の衝突事件、日本巡視船が中国漁船を取り締まろうとしたのは2000年の日中漁業協定に違反すると中国には見えるでしょうね。両政府が取り締まれるのは自国の漁船だけとされているからです。今回の場合、中国漁船が射撃して来たり、衝突して来たりしたことは問題でしょうが日本巡視船が退路を断ったから…との言い訳は可能なようにも思います。このことについて、いきりたっている中国の若者にどう説明するつもりなのか。
相互理解のためにはそれぞれが相手の立場に立ってものを眺める事が出来る必要があります。日本にはその能力があるのかしら。
我々は日常の政治問題について、一々その歴史を調査してそれに基づいて自分の意見を形成する…なんて暇は有りません。したがって為政者や世論にお任せ…もやむを得ないでしょう。しかし、重要なことに関して自分なりに意見を云おうと思うなら為政者の口車に乗ることなく、自分で事実関係を調べ、それに基づいて思考を巡らす必要があります。
何だかんだ…とは云いながら、結局は、やはり尖閣諸島の領有を主張する台湾を含めて三国で棚上げの約束をするか、国際司法裁判所にの裁定をもらう以外の解決策以外には当面ないのではないかしら。共同管理も難しそうだし…。
新しい資料が見付かれば、私の意見もひっくり返るかもしれませんが…。