私は高校で日本史を取りませんでした。大学入試では社会は2科目で受験する必要がありますが、世界史をとればそれ1科目でよかったためです。
したがって未だに自国歴史コンプレックス。
最近になって色々歴史の本を読んでいます。10何年前に読んだのが井上清の「日本の歴史」。もう忘れましたが、元禄文化は一握りの貴族のものであって日本人民には無関係であった…」というような記載がどこかにあって、さすがは左翼的歴史家…と思わずニヤリとした記憶があります。格別の感銘は受けませんでした。
次ぎに購入したのは東京裁判で唯一日本無罪を主張したパール判事の判決文。是非読みたいのですが、そのページ数(1,669頁)の為にまだ読めていません。
もっとも新しいのは昨年読んだ孫崎享の「戦後史の正体」(創元社2012刊)。
これを読むと正に目から鱗。ただしそこにあるものの考え方としての新鮮さから鱗が取れただけで、著者の考えに染まった訳ではありません。
外務省の国際情報局長、各国の公使や大使を歴任。その持っている情報資料は膨大なようです。それを基に日本の政治を動かしてきた政治家を対米従属派と自主独立派に分けています。そうして日本の政治を実質的に米国が動かしてきたことを示しています。自主独立派には米国の裏工作により失脚した例が多いようです。勿論著者は米国の裏工作に反対の立場です。各件についてはほとんど文献を引用していますから、著者独自の見方ではありません。全く彼の推測した部分もあるようですが、それが判るように書いています。
各件において種々の見方があり、著者は自分の主張に都合のいいものだけを引用し、他を無視したのかどうか、調査能力が実質的にない私には不明です。
例えば、1960年の安保闘争、この頃は私はもうサラリーマンで、憲法9条が存在する限り米国の傘に下に入らないと日本を護れない…と思っていましたから、私が出た大学の教室が教授達を含めて安保反対運動に出掛けて空っぽだ…と聞いて理解に苦しんでいました。
百万人以上の人がデモに参加し、騒動で東大生の樺美智子さんが亡くなりました。
全学連の主導者達の著作によれば、運動参加者には安保のことなど判っちゃあいなかった…とこと。運動資金は財界から出ていたのです。目的は自主独立派であって米国から疎まれていた岸内閣の打倒だったのだそうです。財界へは米国から資金が流れてきた…とまでは書いていませんが。
自分の知識を見なおすためにも有用な本であると私は思います。
この本とは関係ありませんが、著者は尖閣諸島は中国、竹島は韓国のもの…との意見の持ち主であり、その根拠を読んでも私は彼の意見には疑問を持っています。