日韓関係に関心ある方々には一読をお勧めしたい本です。日本は朝鮮に申し訳ないことをしてしまった…と日頃罪の意識に苛まれている方はこれを読めば少しは心が安らぐ筈です。 日本はいいことも沢山した…と思っている人は人に自説を主張する時の資料に有用です。 著者アレン・アイルランドは世界的な植民地統治研究者です。 序論には「日本の朝鮮統治を植民地統治の具体例として検証することが本書の目的であり、それが法的あるいは倫理的に認めうるもであるかは問題としない」と記載しており、統計資料に基礎を置いた、客観性あるレポートです。一応歴史ある文明国家であったのに、日本に併合され、公用語も日本語を強要されたことについての韓国の人たちの自尊心については無関心です。これは本書のテーマ外のことです。 彼の評価によれば、日本の朝鮮統治は他の例の植民地統治に較べて、政治の行政手腕においても、民衆の文化的経済的発展においても他に類いがない程優れているそうだ。 但し1926年の著作であり、竹島、靖国、慰安婦問題は出て来ません。 第1章 序論 ここでは帝国主義と民族主義の論争について詳しく触れているが、著者はそれへの意見はのべていない。そうして、今(1926年)の朝鮮は入手可能な資料から見ればそれにより李王朝時代とは比べものにならないくらい良く統治されている…と評価している。 第2章 朝鮮の描写と歴史 朝鮮の歴史と日本に併合される経過、日本に併合される前後の鉄道・道路・街路・海運・郵便・電信・電話通信などの状況の変化などが概説されている。、 第3章概論 日本と朝鮮の関係、齋藤総督府に任命、統合への新しい精神、物質的発展、政府などの項目について記載されている。 第4章 第5章 政府組織 朝鮮内での日本による行政制度を評価・記述するには、日本に朝鮮を統治する権限があるかどうか…と、どのように統治したか…と二つのテーマがあるが、前者は本書では副次的にしか扱わない…として政府組織の記述をしている。日本は李王朝の悪政による経済の不安定・通信手段の無能・匪賊にあらされた地方・商業や産業に不適切な金融機関・人民の持続的な無気力を改善させる必要があった(搾取のための植民地なら不要)。そのために政府組織をどう変えていったか…が報告されている。 日本政府の補助により各項目の予算がどのように増えていったか…の記載もある。 (以下詳細略) 第6章 司法制度と裁判所 第7章 警察監獄 第8章 政府の財政 第9章 教育 第10章 医療・講習衛生・社会福祉 第11章 第12章 第13章 経済発展 政治学の研究者ではない我々一般人が本書を全部読んで記憶する必要はないと思われるが、所々を拾い読みしでいいから、日本の植民地統治の概要と成果を大ざっぱでいいから把握して頂きたいものです。これほどに総括的でかつ詳細な報告書は他にはないと思われます。英和対訳約700頁。だれかハングルに翻訳しないかしら。 . |