土用の丑の日、我が家も絶滅危惧種に何とかありつけました。 土用の丑の日に鰻を食べようと言い出したのは、江戸時代の発明王、平賀源内だとか。鰻屋に依頼されてのことだったようなので、情報操作の走りですね。当たり前ではないことを、さも当たり前であるかのように思い込ませるのが広告戦略のカギであるようです。 たとえばバレンタインデーのチョコレートは、日本の菓子メーカーの戦略で始まったものです。初めは、女性が心を寄せる男性だけに贈るものでしたが、好きでもない相手には義理チョコ習慣がつくられ、男性からのお返しと称してホワイトデーが発明され、近年では逆チョコだの、友チョコだのと、いったいどこまでエスカレートするやら…。 源内が鰻と言わず、鰯と言っていたら、今ごろ鰯が絶滅危惧種になっていたかもしれません。 鰻で思い出したのが、江戸時代のこんな狂歌。 いく本も さくやうなぎの かばざくら におうはなには たれもこがるる 漢字で表すと、 幾本も 咲くや【鰻の】蒲桜 匂う花には 誰も焦がるる 蒲桜(カバザクラ)は桜の種類です。「何本も咲いている蒲桜の花の香りには誰もが恋い焦がれる」という意味。ただし、【鰻の】だけが余計です。 【鰻の】をカギに書き直すと、別の意味が現れます。 幾本も 裂くや鰻の 蒲【桜】 匂う鼻には タレも焦がるる 鰻を焼くいいにおいがしてきそうですね。 鰻屋が店頭で鰻を裂くパフォーマンスも、蒲焼を焼きながら団扇でバタバタ仰ぐのも、視覚、聴覚、嗅覚を刺激する広告戦略です。 私たち善良な市民は、日々、広告に踊らされているわけですね。 |