先日、奈良に向かって車で走っていた。宇治植物園を抜けて、鴻巣公園を越えて、梅工房近くを通り過ぎて、府道70号線を南下していくと道が細くなって慎重に運転していた。対向車が来たらすれ違えないところに来た時に限って対向車は来るもので、案の定だった。橋の工事の為に丁度迂回路のカーブを曲がったところだった。 ここならこちらが停まれば対向車は通り過ぎられるだろうと車を道の端に寄せると、向こうも丁度通り過ぎれる道幅のところで停まってくれた。目を合わせて、お先にどうぞと合図を送ると、向こうも同じように道を譲ると合図を送ってくれた。 我先に対向車より先に進もうとする人が多い中で、久しぶりに道の譲り合いで、心が少しポカポカと暖かくなった。それならばと、こちらが通らせていただきますと合図を送ると対向車の浅黒い笑顔が返って来た。 車を進めた時だった。停まってくれた対向車を追い越して、大型のバンタイプの車が向こうから突っ込んで来た。ヒヤリとしてブレーキを踏んで事故は避けられたが、そこは車がすれ違えない細い場所。突っ込んで来た車は70歳を過ぎていそうな男性。助手席や後ろのシートには初老の女性がたくさん乗っていた。そして、停まったまま動かず、通り過ぎるには細すぎる道を行けと初老の男性はアゴをしゃくって合図して来た。 こっちは、爽やかに道を譲りあって暖かい気持ちになった直後の不愉快なアゴしゃくりだったから、道が細くて通り過ぎれないから、バックしろと合図した。すると無謀にも突っ込んでこようとこちらに向かって来た。こちらが後ろに下がることも考えたが、こちらは橋の工事で迂回して来たカーブが後ろで、バックすると後ろから車が来れば見えないから危険である事は明らかだった。大型バンは譲ろうとしない。困ったなと思った時だった。対向車で道を譲って来れた浅黒い青年が「道を譲りあって停まってんのに、わからんのか、追い越しやがって、お前がバックして道を譲らんかい。」と大声で怒鳴った。バンの初老の男性は、その車を振り返り僕の方を指差して、あいつが下がれば良いというようなデスチャーをすると、浅黒い青年が「あっちがバックしたら後ろからの車で事故になるやろ、ボケ、お前が早う下がって道を開けんかい。」と怒鳴った。バンの初老の男性は何か言いたそうな顔でこっちを睨みつけながら、こちらが通れるように移動した。それでも左の家と2センチあるかないかギリギリで通り過ぎなければならなかった。バンとすれ違う時、一旦車を停めて窓越しに初老の男性に「譲り合う気持ちがないと、今度は本当に事故るよ。危ないよ。」と言った。 そして、道を譲って来れた浅黒い青年に、一旦車を再び停めて「ありがとうな。せっかくの譲り合いの気持ちがあの老人のせいで台無しだね。」と言うと「本当や、あいつがみんな悪いんや。」と言って爽やかな笑顔をくれた。 こんな青年と友達になりたいな。と思いながら先を急いでいたから、笑顔を返して、そのままアクセルを踏んだ。 初老の男性は、どっかの偉い人なのか、良い服を着て自分が突っ込んで来て事故りかけたのにアゴで人を動かそうとした。浅黒い笑顔の青年は軽トラでシャツに手ぬぐいを首に巻いていた。最後のわずかな会話と彼の笑顔が再び僕を暖かい気持ちにしてくれた。こんな触れ合いがあるから人が好きだと思わせてくれた。感謝感謝。 どこかであの青年に友達として会えないかなぁ〜♪ |