ヨーロッパの映画では修道院というと、あまり良い形で描かれないことが多いようだが、この作品でも、修道院とは理由あり女性の収容所であり、年配のシスターたちから刑務所のような重労働を強いられる、というところが強調され、あげく、アイルランドのカトリックの修道院では、アメリカ人の富裕層の人たちに対し、修道院の女性の子どもを母親の意志に関係なく養子に出していた、という実態も暴かれている。
50年間消息がわからなかった息子の行方を、懺悔も含めて見つけ出そうとする主人公の姿は、名女優ジュディ・デンチの見事な演技もあって印象的だが、依頼を受けて供に息子探しを行うジャーナリストは、かつては政府の広報係だったのが理由があって辞任し、本を書こうと考えていたのが、なぜ主人公の息子探しに興味を覚えたのが、この辺の心情の変化がよくわからない。
また、ジャーナリストは宗教に懐疑的だが、一方で敬虔な姿勢を貫こうとする主人公との対比も、もう少し詳しく描いたほうが良かった感じ。
アメリカまで行ってから息子を発見するまでの展開や終盤でのやや意外な展開も、少し甘さが感じられるが、これがすべて実話に基づいているのなら、逆に、ドラマ的な描写をどこまで強調するか。これは少し難しかったかもしれないが、結局、営利目的で子どもを養子に出していた修道院の実態を訴えたかったのか、母と子の絆を描きたかったのか、ここらでもう少しテーマを搾ったほうがよかったかもしれない。
★60点